野焼きの健康被害

 

野焼きの煙の成分は、一酸化炭素・ホルムアルデヒド・アセトアルデヒド・粒子状物質(PM2.5、主に多環芳香族炭化水素)などです。

これらは煙草の副流煙と同じ物質で、煙草と同等の健康被害をもたらします。

刺激性のある煙に曝露すると目、鼻、喉の粘膜を刺激し苦しさを感じます。

グアイアコールなどの独特の臭気により、吐き気を催します。

一酸化炭素は血管の動脈硬化を促進し、長期的に心臓にダメージを与えます。

ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドは発がん性だけでなく、喘息を引き起こす物質とされています。喘息による死者は年間1500人とも言われています。野焼きは喘息患者にとって本当に死活問題です。

また、多様な揮発性化合物は、シックハウス症候群化学物質過敏症患者にはわずかな量でも頭痛、吐き気、倦怠感の原因になります。

PM2.5は肺から血管内に入り込み、長期的に心筋梗塞、脳梗塞、肺癌のリスクが高まります。

短期的な曝露でも、PM 2.5濃度が10μg/M3上昇すると事故を除く全死亡や呼吸器系、循環器系の死亡リスクが 0.数% 〜数%程度増加すると推計されています。 

 

 

2004日本アレルギー学会論文「稲作地域における環境因子と気管支喘息」

萱場 広之 (秋田大学 医学部統合医学講座臨床検査医学分野(当時))

https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/53/2-3/53_KJ00002640564/_pdf/-char/ja

 

稲籾の乾燥,野焼きのシーズンには救急外来の喘息患者が増加することは、秋田で地域医療に携わる医師であれば以前から知られたことであり、民間、医師会においてもその規制の強化を望む声が高まっている。

 

稲藁焼きで発生する刺激臭のある煙にはホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの他、多くの揮発性物質が含まれており、周辺住宅地域での気道刺激を引き起こす可能性が示唆された。

大気汚染:子どもの脳の発達に及ぼす影響

ユニセフ報告書

https://www.unicef.or.jp/news/2017/0264.html

 

微小粒子状物質(PM2.5)を吸い込むことで、脳の細胞を損ない認知的な発達を妨げ、生涯にわたる影響または低下を及ぼす可能性がある。

汚染物質には、多環芳香族炭化水素のように、脳の中でも、神経細胞の伝達を助ける重要な役割を果たす部分、すなわち子どもの学習と発達の基礎となる部分を破壊し得るものもある。

幼い子どもの脳は、おとなの脳に比べて、より少ない量の有害化学物質によって損傷を受ける可能性があるために、特に影響を受けやすい。

Haze(ヘイズ)中に含まれるPM2.5の対策について

在シンガポール日本大使館

https://www.sg.emb-japan.go.jp/health_haze_4jul2013(PM2-5)_j.pdf

 

PM2.5 の健康影響

(短期暴露によってすぐにあらわれる影響)

  • 喉の痛み
  • 結膜炎症状(充血、かゆみ)
  • 鼻炎症状(鼻水、くしゃみ)
  • においを原因とする気分の悪化
  • 循環器疾患(狭心症など)、呼吸器疾患(喘息や肺気腫、慢性気管支炎など)が持病の人の症状の悪化 等

(長期慢性暴露によって徐々にあらわれる影響)

  • 循環器疾患(狭心症など)、呼吸器疾患(喘息や肺気腫、慢性気管支炎など)の発症や悪化
  • 肺がん発症リスクの増加 等

心肺に関係する持病のある人、高齢者、子どもの場合、ダイレクトに症状が悪化する場合もあります。

 

 

 

PM2.5の健康影響と対策

産業医科大学 呼吸器内科学 迎 寛

https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info/cic/attach/briefing_h25-mat03.pdf

 

PM2.5濃度が上昇すると、当日または数日以内に死亡する人が増加するという関連が報告されている。

PM2.5 大気汚染と健康への影響

政府インターネットテレビ
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg7769.html

汚染された大気の中に含まれる目に見えない物質「PM2.5」。ここ数年、中国で大規模に発生した大気汚染物質のPM2.5による日本への影響、特に健康への影響を心配する声が高まっています。そこで、今回はPM2.5とは何かや、PM2.5の健康への影響について専門家の解説をご紹介します。

その他の情報

 

★ 世界保健機関(WHO)(日本経済新聞)

微小粒子状物質「PM2.5」などによる大気汚染により、

肺がんや呼吸器疾患などで年間約700万人が死亡

 

★ 日本の大気汚染死亡者数(東北大学発表資料)

年間3.7万人~6.1万人

具体的な健康被害 肺癌、脳卒中、心血管疾患、呼吸器疾患、喘息

最近は糖尿病、乳児死亡、発達障害、口腔がんとの関係も

 

★ 米国がん学会(海外がん医療情報リファレンス)

米国ユタ州の約16,000人の若年がん患者を対象とした分析で、微小粒子状物質(PM2.5)への曝露は、特定のがんの診断から5年後と10年後の死亡率の増加と関連していることが判明

 

★ ハーバード大学公衆衛生大学院(HSPH)(lifehacker)

PM2.5の密度がたった「1立方メートルあたり1マイクログラム」高くなっただけで、COVID-19による死亡率が8%上昇した

 

 稲わら焼きと気管支喘息(長岡赤十字病院小児科)

  • 喘息患児の救急外来受診数は、(野焼きの多い)9月は1月から8月までの各月と、12月と比較して有意に受診数が多かった
  • 小児科入院患児数でみると、9月は1月から8月までの各月と比べ有意に喘息発作による入院数が多かった
  • 稲わら焼きの影響については、Ⅰ群(稲わら焼きの影響があると考えられる日)はⅡ群(影響はないと考えられる日)と比較して有意に喘息患児数が増加していた
  • 暴露前の被験者の ピークフロー値は640l/minで、暴露後20分で 380l/min(59.3%)と最低値 をとり、一時回復 した後10時間後に,遅発性 と考えられる反応 と して再び 400l/min(62.5%)に低下 した
  • 暴露前の80%の レベルに達するまで48時間を要 した,

 

 

 

(注)ピークフローとは、力いっぱい息をはき出したときの息の速さ(速度)の最大値

(イラスト:環境再生保全機構