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法の適用に関する通則法第3条~慣習と習慣


 庭の落ち葉は、日常生活を営む上で通常は市町村の指定する方法で処分しなければならない。焼却処分は、日常生活を営む上で原則禁止されており、周辺の影響が軽微ともいえないので、施行令14条5号に該当しない。しかし、地方の田園地域では、「地域の昔からの習慣」として規制が進まず、「郷に入っては郷に従え」といった同調圧力に従わざるを得ない現状がある。法16条の2第3号では、「社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却」が罰則の例外とされているが、習慣ならば慣習上やむを得ないものとして例外として許容されるのだろうか。

 「慣習」とは、広辞苑によると、「伝統的な行動様式」という意味である。したがって、法16条の2第3号でいう「社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却」とは、伝統的な行動様式を例外とした施行令14条3号「風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却」を主に指すものと推測される。具体的に、平成12年通知では、「どんと焼き等の地域の行事における不要となった門松、しめ縄等の焼却」が例示されている。庭での落ち葉焚きは、個人的理由で行うものであり、伝統的な行事に必要な焼却とは趣旨が異なるので、施行令14条3号を適用することはできない。

 ところで、慣習と法の適用に関しては、法の適用に関する通則法第3条により、「公の秩序又は善良の風俗に反しない慣習は、法令の規定により認められたもの又は法令に規定されていない事項に関するものに限り、法律と同一の効力を有する」と定められている。どんと焼きは、地域の住民の健康と繁栄を願うを願う目的で行われ、公の秩序を乱すものではなく、善良の風俗に反しないものであり、施行令14条3号の規定で許容されたものであるから、通則法の適用範囲である。

 では、庭で落ち葉を焼却処分する行為は、通則法で認められるのだろうか。この行為は、「昔から住んでいて前からやっていることだから」、「ゴミを焼却施設に持って行く、定期収集に出すことが負担になる」という理由によるものであり、これは個人的理由による「習慣」に過ぎない。庭での落ち葉の焼却は、有害な煙により健康被害が出るなど公の秩序を乱すものであり、公共団体指定の処分方法を守ならないものであるから善良ともいえない。また、田舎特有の同調圧力により煙の被害を受任させることは、憲法25条1に定められた「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害するものであるし、国がこれを許容することは、同25条2「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」責務に反する。そもそも、廃棄物処理法の改正は、昔からの悪しき習慣を見直し、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図るために実施されたものであるから、昔からの習慣という理由で有害な煙の被害を受忍させることは法の目的に反する。したがって、庭での落ち葉の焼却処分を通則法に適用させ、「地域の昔からの習慣」といって許容させることはできないはずである。

 

まとめ

通則法第3条により、公の秩序又は善良の風俗に反しない慣習は法律と同一の効力を有するが、庭の落ち葉焚きは、公の秩序を乱し善良ともいえず、廃棄物処理法の目的にも反するので、慣習として許容されない。