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落葉焚きの有害物質


木や葉は、どちらも主にセルロースという有機物で構成され、化学式は (C6H10O5)n で示される。セルロースは、熱分解により脱水縮合反応が順次進行し、リボグルコサンなどが生成されるが、これが焦げ臭の原因である。においが多く発生するのは、180〜350℃ にかけてであり、480℃以上では完全燃焼となり、においはあまり発生しない。低温で燃焼するであろう落ち葉焚きでは、においが多く発生することがわかる。生物は焦げ臭で火災などの危険を察知する。木材を燻した煙から生成した木酢液は、虫や動物を寄せ付けない忌避効果がある。つまり、落ち葉焚きの焦げ臭は不快なにおいなのである。

 

セルロース は熱分解反応により、リボグルコサンの他にホルムアルデヒド(化学式HCHO)やベンゼン類を生成する。五つのベンゼン環を持つ化合物であるベンゾ[a]ピレン(化学式C20H12)などの多環芳香族炭化水素(PAH)は、発がん性を持つ可能性があり、大気中微小粒子(PM2.5)に含まれている。PM2.5の健康被害は発がん性だけでなく、呼吸器疾患(喘息など)、循環器疾患(脳梗塞や心筋梗塞など)との関連も指摘されている。PM2.5は、煙を伴う稲わら焼きなどの野焼き行為によって、その質量濃度の上昇に直接的に影響を与えることから、地方公共団体のホームページでもPM2.5と野焼きに関する注意喚起を行っている。このように、野焼きで有害物質が発生することは、医学・大気汚染・環境行政の分野で広く知られている。落ち葉焚きだけが、まるで害が無いかのように扱われることは、全く根拠のないことである。