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兵庫県議会で野焼きの質疑


兵庫県議会(令和 6年 2月第366回定例会(第5日 2月26日))において、三田市選出議員(自由民主党)から野焼きに関する質問がされました。

https://www.kensakusystem.jp/hyogopref/cgi-bin3/ResultFrame.exe?Code=rpo2cq1zucjm5gwgk4&fileName=R060226A&startPos=-1

 

○(白井かずや議員)

 2番目の質問は、野焼き対策についてであります。

 三田市では、農業者が行う稲わら等の焼却を適法であるとの考えを持つ三田市と、例外はあくまでも例外とする三田警察署の考えの相違から、農業関係者に大きな混乱をもたらした時期がありました。

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律では、野外等での廃棄物の焼却は禁止されていますが、施行令で例外規定が設けられ、農林水産業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却は除外されています。

 これらの法律や政令に基づく、農業者が行う野焼き、あぜ焼きへの対応には多くの自治体が苦慮しており、その多くは例外とされるやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却の解釈に頭を悩ませています。

 そのため、国が行った令和3年の地方分権改革に関する提案募集では、農業のためやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却を、指導の対象とするか否かについて、例えば、地域において軽微な焼却に係るルールづくりが行われていることをもって、各地方公共団体が判断することができるといった旨の見解を、国が通知書等で明確にするよう求める提案が広島市からなされました。

 これを受けて、令和3年11月30日付で環境省から各都道府県宛に発出された通知には、やむを得ないの解釈として、公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却に該当するか否かという点を勘案し、法の目的に照らして合理的と認められるかにより判断されるべきものと記されています。

 この通知が発出された経緯から考えると、法の目的に照らして合理的と認められる焼却かどうかは、措置命令等の行政処分及び行政指導を行うことができる市町長が案件ごとに判断すべきでないかと感じています。

 しかしながら、市町長の判断となれば、同じ行為であっても地域によって兵庫県内で罪に問われたり、問われなかったりと矛盾が生じます。実際、冒頭の三田市における混乱の際にも、市外に出れば、のどかな田園風景の中で当然のごとく野焼きが行われていることに対して、同じ兵庫県にありながら、なぜこのような違いがあるのかという、私のもとに多くの怒りの声が届きました。

 住宅密集地域、多自然地域、また、この二つが隣接する地域など、様々な地域性のある広い兵庫県で、一律の基準はできないとしても、県として、ある程度の方向性を示すことができないかとも考えます。

 そこで、市町長の判断で農業者の野焼きへの措置命令等行政処分及び行政指導が行われること、また、県が法の解釈等に一定の方向性を示すことについて、当局のご所見をお伺いいたします。

 

○環境部長(菅 範昭) 

 私からは、野焼き対策についてお答えいたします。

 議員ご指摘のとおり、廃棄物の野外焼却は、廃棄物処理法で原則禁止されております。ただし、社会の慣習上やむを得ない焼却または周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である焼却は例外とされております。具体的には、農業、林業または漁業を営むためにやむを得ない焼却が施行令で定められておるところでございます。

 稲わらやもみ殻、あぜ草は一般廃棄物に区分されまして、市町が自治事務として法の運用や廃棄物処理の責任を負っております。

 稲わらなどの野外焼却が、周辺地域の生活環境に及ぼす影響は、農地と住宅との位置関係、地形や風向、季節や天候、地域住民の生活スタイルなどの様々な要因を勘案して判断する必要があります。

 このため、農業者の野焼きにつきましては、各市町が地域の個別事情に応じまして、法の目的である生活環境の保全及び公衆衛生の向上に照らし、合理的に判断することが適切であるというふうに考えてございます。

 県といたしましては、必要に応じまして、市町・一部事務組合と県で構成します兵庫県市町廃棄物処理協議会で情報共有や意見交換を行うなど、環境保全と地域農業の調和を目指した支援を続けてまいりたいと考えてございます。

 

 

<考察>

白井議員の質問では、野焼きの違法性について「市町長が案件ごとに判断すべき」と言いつつ、「県として、ある程度の方向性を示すことができないか」と締めくくり、多少の矛盾が感じられました。これは、市民から野焼きの賛否様々な意見が寄せられたことへの配慮からでしょうか。

これについての県の回答は以下のとおりです。

  • 稲わらやもみ殻、あぜ草は一般廃棄物に区分され、市町が自治事務として法の運用や廃棄物処理の責任を負う
  • 各市町が地域の個別事情に応じまして、法の目的である生活環境の保全及び公衆衛生の向上に照らし、合理的に判断することが適切である

結局、何も進展が見られず、環境省の令和3年11月30日通知をそのまま引用しただけに終わりましたが、以前ほど野焼きを寛容するような考えはないことが明らかになった点において、意味があったと考えられます。

違法性の判断において、県は「稲わらなどの野外焼却が、周辺地域の生活環境に及ぼす影響は、農地と住宅との位置関係、地形や風向、季節や天候、地域住民の生活スタイルなどの様々な要因を勘案して判断する必要があり」と回答していますが、これには適正処理の責務という要素が書けており、生活環境に影響がなければ、あるいは生活スタイルに根ざしたものならば、自由に廃棄物を燃やして良いと解釈されてしまいます。

今後の課題として、①真にやむを得ないか否か(他に方法がないか)、②適正処理の責務の二点について明らかにしていく必要があります。

それについては現在論文として執筆中です。

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コメント: 1
  • #1

    年金生活の高齢者 (木曜日, 28 3月 2024 00:04)

    白井かずや議員は兵庫県三田市選出議員ですが、兵庫県三田市では、農業に関する野焼きをめぐる解釈の違い三田市と地元警察との間で論戦?が勃発して新聞などでも取り上げられました。
    詳しく知りたい方は検索をお願いします。
    三田市議会のホームページには、会議録を検索するシステムがあり、このシステムにより、検索キーワード「野焼き」で検索すれば、令和5年で7件ヒットしました。
    https://ssp.kaigiroku.net/tenant/sanda/pg/index.html
    以下は抜粋(切り抜き)であり、それに基づいて最後に私見を述べさせて頂いてますが、公平性の観点から必ず出所の記録内容を確認した上でご判断をお願いします。

    令和5年第372回(9月)定例会
    福田秀章議員
    次に、3点目の質問は、農家の野外焼却について質問に入ります。
    三田市の農業は、過去から農業者が農作業で行う稲わら等を焼却する野焼きについて、社会の慣習となっているとともに、実り豊かな作物を育てるために大変重要なものであります。
    この野焼きは、病害虫の駆除や殺菌などの効果があると言われており、刈り取った雑草や稲わらなどを放置すれば害虫、ミミズ、モグラ等が大量に発生することになり、これらが有害鳥獣などの餌となり、畔や田んぼを掘り起こし、荒らすことから、大雨の際には土砂崩れなど災害にもつながっています。
    また、農地に隣接する道、水路のほか、県道、市道等の除草についても、農業者の方々がこれまで取り組まれ、地域の環境保全、美化活動に貢献されております。
    そこで質問に入ります。三田市において平成29年以後、農業を営むために刈り草などを焼却するのに対し市民からの苦情の通報が相次ぎ、警察の取締りが厳格になり、農業者から「一体どうすればいいのだ」というたくさんの相談が寄せられるようになりました。その後、ガイドライン案や例外となる野外焼却の運用指針案を提案されましたが、納得する運用に至っておりません。
    現在、希望される地域におきましては、市による刈り草の回収が行われています。法律では、野外焼却(野焼き行為)の禁止の例外規定と認められております。ただし、例外と認められている焼却行為であっても、近隣に迷惑のかからないように行うのは当然であります。十分に配慮した方法で焼却する、これは必要であり当然なことであります。
    三田市は、良好な住宅地と農地が隣接しており、市民それぞれがお互いに心配りをしていく必要があります。この5年間、農業者も近隣住民も十分理解していると思います。よって、市が回収するようなことはもうやめて、元の状態に戻してはと考えますがいかがですか、お答えください。
    令和5年第370回(3月)定例会
    森本政直議員
    野外焼却(野焼き)の今後の対応についてお伺いをいたします。
    三田市においては、平成29年以降、農業を営むために、刈り草等の焼却をするに対し、市民からの苦情の通報が相次ぎ、警察の取締りが厳格になり、農業者からの相談が寄せられるようになりました。その後、市は、ガイドライン案や運用指針案を提案されましたが、紆余曲折を経て今に至っております。
    現在、希望される地域におきましては、市による刈り草の回収が行われております。もともと法律では、農業者の農業を営む上で行う野外焼却は例外として認められております。ただし、例外と認められている焼却行為であっても、近隣に迷惑のかからないように行うのは当然であります。十分配慮した方法で焼却をする、これは必要なことであります。
    三田市は、良好な住宅地と農地が隣接しており、市民がそれぞれお互いに心配りをしていく必要があります。この5年間、農業者も近隣住民も十分理解しているはずであります。よって、もう市が回収するようなことはやめて、普通の状態に戻してはどうかと考えます。夕方に田畑から煙がゆらゆらと立ち上る情景は、三田の風物詩でもあります。三田市ホームページにある「野外焼却の禁止について」の説明どおりであり、通常に戻ることを期待いたします。
    ◎市長(森哲男) 野焼きの問題につきましては、あの当時、いろいろと警察のほうが厳格なやり方をしたり、それから熱心な環境保護団体があったり、また報道のやり方とか、いろいろあったんですけど、その当時に比べると、かなり野焼きについての理解が深まってきていると。しかし、一部の特定の地域ですけど、いわゆる通報をされると。警察も通報されたら、当然向かわなければいけないし、我々はそれを前に、環境サポートセンターでしているというようなことをしています。おおむね、いっときのあれは収まってきたのかなというふうに思っています。
    そして、先ほどの刈草回収につきましては、ずっと続けるつもりは私はありませんし、またどうしても、やっぱりこれがある程度負担があっても、合理的な方法であると。その地域の方々が、やはり煙が出ることによっていろいろされると。そうしますと、これはやっぱり市の財政負担を軽減するような方法で、一定のそういう方々から負担金を取るとか、いろんな方法が考えられると思います。
    私も、かつて32年前に三田に来たときに、近くに野焼きがあるときに、初めはびっくりしました。しかし、私が生まれた南河内のところとよく似ているんです。そして、やっぱりお互いが理解し合うというような、三田は今それができつつあるのかなと思っていますので、その辺をしっかりとしながら、三田方式といいますか、当然野焼きをやって理解される。しかし、一方、いろんなことがあっても合理的に違う方法でやるというのが、地域によってあるというのは、私は一つの三田の目指すところじゃないかと。
    財政負担については、十分これから軽減する方法をしっかりと話し合いながら進めていきたいと、そういうふうに思っております。

    私見ですが、質問中の「夕方に田畑から煙がゆらゆらと立ち上る情景は、三田の風物詩」について、(野焼きを)風物詩と感じるかどうかは人によると思いますし、市長による「野焼きの問題につきましては、あの当時、いろいろと警察のほうが厳格なやり方をしたり、それから熱心な環境保護団体があったり、また報道のやり方とか、いろいろあったんですけど、」のくだりには、何となくの違和感を感じました。
    「熱心な環境保護団体」ですか。
    私は「野焼き」と「野外焼却」は別の定義があるように感じますので、混同すれば法律の解釈に支障が生じると思います。
    令和3年11月30日環境省通知をあらためて確認していただくことをおすすめします。