レボグルコサンと放射性炭素同位体比を用いた東京
都内の大気有機粒子に対する野焼きの寄与推定
大気環境学会誌 第 55 巻 第 5 号(2020)
東京都環境科学研究所 星純也ほか
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【抄録(オリジナル)】
大気中微小粒子状物質 (PM2.5) の日ごとのフィルタ採取を 2014 年度に通年で実施し、
イオン成分、炭素成分及び有機指標成分(レボグルコサン)を測定することで、東京都心
部の詳細な日変動データを得た。また、2013 ‒ 2016 年の PM2.5 高濃度日に採取した PM2.5
試料 (n = 26) について全炭素 (TC)、元素状炭素 (EC) の放射性炭素同位体 (14C) の
測定を行い、現代炭素比率(pMC) を得た。得られた TC、EC の pMC と試料中の TC、EC
濃度から有機炭素 (OC) の pMC を算出した。測定の結果、レボグルコサンの年間の日平
均濃度は夏季に低く秋季から冬季にかけて濃度が上昇する傾向を示した。風向別に解析す
ると、農業地帯方面からの風向が卓越した日にレボグルコサンの濃度が上昇し、おおむね
半径 10 km 以内には田畑の存在しない都心部においても、OC の起源として秋季から冬季
にバイオマス燃焼の影響を強く受けていることが示された。また、得られたレボグルコサ
ン濃度と OC 濃度を用いて算出した OC 中のバイオマス燃焼の寄与割合と、TC、EC の pMC
から算出した OC の pMC を比較し PM2.5 を構成する OC の起源の推定を行った。レボグ
ルコサン濃度から推計した OC 中のバイオマス燃焼の寄与は、秋季‒冬季には平均で 13 ‒
31 %となり、夏季には 2.6 ‒ 6.2 %となった。一方、OC の pMC は 56(春季)、61(夏季)、64
(秋季‒冬季)と季節による大きな変化は見られなかった。これらの結果から都市部の OC
の起源として通年で生物起源の影響が大きいと考えられる。また、レボグルコサンの発生
源データから推計したバイオマス燃焼起源の OC と比較することで、OC 中の生物起源炭
素の発生源として秋季‒冬季ではバイオマス燃焼、春季‒夏季ではバイオマス燃焼以外の
生物起源が相対的に大きく関与していると考えられた。
【当会による解説(清水)】
近隣に田畑がほとんど存在しない東京都心部(江東区新砂)においても、特に秋から冬
にかけては PM2.5 の多くが農業地帯から流れてくる野焼き由来となっているため、野焼
きの禁止は急務である。
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