2013 年11月4日に東日本として初めて注意喚起が実施された千葉県の PM2.5 高濃度エピソードの要因推定
大気環境学会誌 第50巻 第3号( 2015)
千葉県環境研究センター 市川有二郎ほか
https://www.jstage.jst.go.jp/article/taiki/50/3/50_152/_pdf/-char/ja
【論文概要】
2013 年 1 月に中国の広範囲で PM2.5 の高濃度スモッグ(993 μ g/m3)が発生し、PM2.5
に対する国民の関心が高まり、環境省は 2013 年 2 月 27 日に PM2.5 が 70 μ g/m3 を
超えると予想される場合、注意喚起を行うとした。2013 年 11 月 4 日午前 5 時から午前 7
時までの間で、市原市内の市原八幡局(92 μ g/m3)、市原廿五里局(ついへいじ)(96
μ g/m3)、市原郡本局(127 μ g/m3)の 3 カ所において 85 μ g/m3 を超えたことから、70
μ g/m3 を超過する可能性があったため、全県を対象に千葉県として初めて注意喚起を行
い、全国的に注目を集めた。
PM2.5 は、11 月 2 日 13 ~ 14 時頃から上昇傾向を示し、11 月 3 日 12 ~ 16 時頃に微
減したが、11 月 3 日 17 時頃に再度上昇傾向となり、11 月 4 日 7 ~ 8 時頃まで高濃度
を維持し注意喚起の実施に至った。4 日 4 時の郡本局で観測された時間値 129 μ g/m3 が
最高濃度であった。11 月 3 日から大気環境は酸化雰囲気であったことから、NH4NO3(硝
酸アンモニウム)の高濃度化に繋がったと考えられる。さらにレボグルコサン、水溶性有
機炭素、Char-EC の測定結果から、バイオマス燃焼(主に野焼き)も大きく影響していた
ことがわかった。また、V、Ni の濃度が高いことから、重油燃焼による寄与も示唆され
た。気象状況については 気温逆転層によって、大気汚染質が拡散されにくかったこと、
および湿度の影響による PM2.5 の上昇に加え、風の収束域により濃縮された汚染気塊が
市原市内に移流したと推測された。
【当会による解説(清水)】
PM2.5 の急上昇の原因は《気象条件等に起因して硝酸アンモニウムが増えた》《工場・
発電所や船舶などに起因する重油燃焼》《野焼き》《気象条件》の 4 点であるが、野焼き
が PM2.5 に占める割合までは正確にわからないものの、レボグルコサンの濃度が通常の
2 ~ 3 倍にもなったことから、かなりのウェイトを占めている可能性がある。
測定地点の近隣には発電所や化学工場等、さまざまな工場が軒を連ねる大工場地帯であり、
この地に発生する大気汚染(PM2.5)は工場へと目が向けられるであろうが、しかし、農
地から飛散する野焼き由来の PM2.5 も相当量あることが確認できた。野焼きは農業地帯
のみならず、都市部においても深刻な大気汚染の原因であり、早急に有効な対策が必要で
ある。
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