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野焼き発生の時間分布調査および稲作残渣野焼きによる大気汚染物質排出量の日変動推計


野焼き発生の時間分布調査および稲作残渣野焼きによる大気汚染物質排出量の日変動推計

大気環境学会誌 第 52 巻 第 4 号(2017) 国立環境研究所 富山一ほか

https://www.jstage.jst.go.jp/article/taiki/52/4/52_105/_pdf/-char/ja

 

【抄録(オリジナル)】

詳細な野焼き頻度分布についての知見を得るために、つくば市において巡回と定点カメ

ラによる観測によって野焼き件数の分布を調査した。2015 年秋季(9 ~ 10 月)に毎日巡

回して燃焼物別の日別野焼き件数を調査し、降雨前に野焼き件数が多くなることが確認さ

れたほか、野焼き件数の 57 %を占めた稲作残渣は稲の収穫時期から一定期間後に籾殻、

稲わらの順で焼却されることが確認された。秋季の巡回調査に続き 2016 年 8 月まで 4 日

に 1 度ほどの頻度で巡回し、月別野焼き件数を比較すると 9 ~ 11 月に多く、1 ~ 8 月に

少ないことが確認された。2016 年 1 ~ 12 月にかけて行った筑波山山頂に設置した定点カ

メラからの観測では、1 月、10 月~ 12 月に野焼き件数が多く、2 ~ 9 月に少ないことが

確認され、1 日の中では午前 10 ~ 11 時および午後 2 ~ 3 時に野焼きが行われやすいこと

が確認された。2015 年秋季の調査結果にもとづいて稲の収穫時期と気象条件から稲作残

渣の年間野焼き発生量に対する日別野焼き発生量比を推計する回帰モデルを構築した。

回帰係数から、降雨前に野焼き件数が増えること、強風により野焼き件数が減ることが定

量的に確認された。

 

【当会による解説(清水)】

野焼きの半数以上が稲わらと籾殻を燃やすことがわかり、稲刈り後に野焼きが多くなる

ことが確かめられた。秋田や新潟などでは稲刈り後に喘息発作が増えると言われているこ

とが、この報告からも裏付けられることになる。

稲わらと籾殻を比較すると、籾殻の方が 2~3 週間早い時期に焼却する傾向があるが、籾

殻焼却の煙は定点カメラからでは捉えられにくいため、定点カメラでは 9 月の野焼き件数

が多くなかったのであろう。

野焼きは晴天が続き風の弱い日にひどくなるため、新潟では 1979 年 9 月 13 日、翌日が

雨天になるため一斉に焼却が行われて、野焼きスモッグがひどかったことが知られていて

いる。

鎌田 (1979) は、青森県五所川原市において例年わら焼きが 2 週間前後続き、そのうち 5

日間に大量の焼却が集中することを指摘している。

稲わらの野焼きを止めさせることに比較すると、もみ殻の野焼きを止めさせることは困難

と思われる。なぜなら、もみ殻は単に焼却するのではなく、燻炭として土壌改良材(pH

調整材)や、積雪地においては融雪剤としても利用するからである。煙が少なくなるよう

な燻炭作りを考案するなども必要ではないだろうか。