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農林漁業者による野焼きはいかなる場合に許容されるか


農林漁業者による野焼きはいかなる場合に許容されるか

ー刑事裁判例から考える廃棄物処理法施行令 14 条 4 号の適用範囲ー

環境法政策学会誌 第 26 号 2023 年 6 月

東北大学助教 (当時、現在は清和大学准教授)今井康介

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kkhs/2023/26/2023_140/_pdf/-char/ja

 

【論文概要】(丸数字は野焼きと健康を考える会による編集)

公害等調整委員会の発表では、2021 年度の公害苦情受付件数は 73739 件であり、その

うち最も多いのは野焼きの 12877 件である。

2017 年頃、行政と警察の法解釈が対立する事件がおきた。兵庫県三田市の農業者が稲わ

らを焼いたが、消防が出動するなどの騒ぎが相次ぎ、野焼き 4 件の刑事立件となった。

農業者の野焼きを一律に容認する三田市の見解と、遺法とした三田署の見解が対立し、環

境省は話し合いで解決するよう促したが、市のオンブズパーソンは、市の解釈は妥当では

ないとした。

そこで三田市は、例外となる野焼きのガイドラインの案を出したが、県は野焼きを推奨

するのではなく、削減につながる内容にすべきと疑問を呈した。その後三田市は、野焼き

が可能な時間や季節を定めた案を出したが、これも反対が多く撤回した。

このような問題が生じるのは、禁止と例外の線引きが明確でないからである。

そこで本稿 は、いくつ かの刑事裁 判例を手が かりとして 、施行令14条4号の適用範囲を

探ることにした。

以下、判例を紹介する。

 

①高松事件 解体工事で出た畳(346 ㎏)を田んぼで燃やしたが、農業とは無関係のため、

例外規定を認めず地裁、高裁ともに有罪。

②山口事件 自宅敷地内の雑木約 600 ㎏を田んぼで燃やしたが、林業とは無関係として地

裁、高裁ともに有罪。

③千葉事件 竹約 21 ㎏や柿の木約 4 ㎏を自宅敷地で燃やしたが地裁、高裁ともに有罪。

罰金 20 万円が課された。

④仙台いちご農家事件 いちご農家がいちご葉約 46.1 ㎏を燃やしたが有罪。焼却せずに

堆肥として利用することが可能であり、農家にとって過重な負担とは言えず、農協もその

旨指導していたため、止むを得ないものではないとした。

 

以上は比較的焼却量が多かった例であるが、焼却量が少ない場合、「軽微なもの」として

許されるのかどうかの判例を上げる。

 

⑤仙台工事現場事件 家屋新築工事現場において、木製型枠 1.1 ㎏を約 10 分間焼却した

が、白煙が 5 メートルほど立ち上り、現場周辺に焦げ臭い臭いが漂っていたため有罪。延

焼の危険も指摘された。

⑥宮崎事件 スピーカー 1 台(焼却残量約 1.85 ㎏)を燃やしたとして有罪。

⑦宇都宮事件 家庭ごみ(段ボール約 0.6 ㎏、樹脂製弁当容器やペットボトル約 0.65 ㎏)

を燃やしたとして有罪。

 

以上のように、たとえ量が少なくても煙や悪臭が発生すると周辺地域の生活環境に影響を

及ぼすため、例外規定は適用できないという司法判断である。

農林漁業者による許容される野焼きの限界は、生活環境に与える影響が軽

微である(ことを前提に、焼却がやむを得ない)場合に限られるとの結論が導かれる。