· 

稲作地域における環境因⼦と気管⽀喘息―穀物粉塵と野焼きを中⼼に―


稲作地域における環境因子と気管支喘息一穀物粉塵と野焼きを中心に一

日本アレルギー学会誌 2004 年 53 巻 2-3 号 萱場広之 秋田大学医学部統合医学講座

https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/53/2-3/53_KJ00002640564/_article/-char/ja/

 

《原文》

 

【背景】演者は秋田の代表的稲作地である大潟村の近傍で地域医療に従事し,小児の気管

支喘息も診療機会の多い疾患の 一つである .秋田のような農業県の大気は清浄で喘息患

者にとっては過ごし安い環境と思われがちである.

実際,春に大都市圏から秋田に転居した患者は喘息症状の改善に喜ぶ場合が多い .しか

し ,秋の稲の収穫シーズンにはそれが幻想であったと気付く,稲作農家の近傍では稲の

収穫期に稲籾の乾燥に伴い微細な穀物粉塵が発生し,さらに稲わらや稲籾の野焼きの煙と

香りは近隣の住宅地にも及ぶ .稲籾の乾燥 ,野焼きのシーズンには救急外来の喘息患者

が増加することは,秋田で地域医療に携わる医師であれば以前から知られたことであり,

民問 ,医師会においてもその規制の強化を望む声が高まっている.

 

【目的 】稲作地域における穀物粉塵と煙に関する規制を目的とする.これまで行政への

要望に際しての傍証とすべく,いくつかの検討を行った.

 

【検討事項 】1)喘息小児患者を対象とした血清 IgE 測定と,アレルゲン検索 ,稲藁エ

キススクラッチテストなどの 臨床検査学的検討,2)穀物粉塵の分析とその抽出物による

好酸球への影響,3)稲藁焼きで発生する煙中の気道刺激物質の分析.

 

【結果】発生する穀物粉塵には,稲籾から剥離した鋭い針状表皮が多く含まれ ,皮膚お

よび咽頭・気道粘膜の物理的刺激となると考えられた.農村地域では Thl に傾いた小児が

多いと報告されているが,大潟村周辺の患児では IgE 値は高値のものが多く,各種アレ

ルゲン陽性率も住宅地や港町の患者と比べて際だった特徴はなかった.稲藁エキスのス

クラッチテストは陽性率,皮膚反応の程度ともダニアレルゲンに比して極めて低率かつ弱

く,穀物粉塵が直接アレルゲンとして作用する場合は多くないと考えられた.稲藁抽出液

によって好酸球は Mac −.L ICAM −1 の発現増強をおこし,その責任成分は粉塵に含ま

れる LPS と考えられた,また,稲藁焼きで発生する刺激臭のある煙にはホルムアルデヒ

ド,アセトアルデヒドの他,多くの揮発性物質が含まれており,周辺住宅地域での気道刺

激を引き起こす可能性が示唆された .