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所沢ダイオキシン問題


野焼き問題について、肯定派による「ダイオキシンで健康被害が出ていない」という意見を多く目にします。

ある著名人のXで、「所沢から始まった野焼き悪人説」と書かれていましたが、これは、「所沢ダイオキシン問題で野焼きが規制されたが、実際は誰も健康被害が出ていないので野焼きは悪いものではない」という主張と思われます。

 

所沢ダイオキシン問題は、所沢市、川越市、狭山市、三芳町の3市1町の雑木林の広がる一帯で、産廃業者による野外焼却が問題となり、1995年、摂南大学の宮田教授による調査で近隣の土壌から高濃度のダイオキシンが検出され、広く世間に知られるようになりました。

各団体の働きにより、1997年に一定規模以上の焼却炉の基準が強化され、1998年に家庭用の簡易焼却炉に対する補助金を見直し、市町村の焼却施設で適切に処理するよう都道府県を通じて通知するなど、野外焼却の見直しが着々と進み、ついに2000年に野焼きに対する罰則規定が設けられ(2001年施行)、2003年には罰則が今の金額に引き上げられることになりました。

その一方で、1999年、一部のマスコミで、所沢産の野菜が高濃度のダイオキシンに汚染されていると報道され、所沢産のほうれん草などがスーパーなどから締め出され、大暴落するという事件が起きましたが、実際にダイオキシンが検出されたのは煎茶で、飲んでも健康に害はない程度だったために訴訟問題に発展しています。これが現在でも「誰も健康被害が出ていない」説が根強く残る由縁だろうと思われます。

 

では、そもそもなぜダイオキシン問題が取り上げられるようになったのでしょうか。

きっかけは、1991年、地域一帯に野外焼却をする業者が増加し、住民が、市に対して悪臭・火災等による被害の通報や改善を要望したことに始まります。

つまり、ことの本質は、ダイオキシンではなく、悪臭と火災等の問題なのです。

 

悪臭により、気分が悪くなる、洗濯も干せないなど、生活環境に影響が出ているものの、悪臭の被害を証明することは困難です。なんとか被害を数値化しようとした結果がダイオキシンの測定だったのではないでしょうか。

現在はダイオキシンがとりあげられることは少なくなりましたが、PM2.5が健康に被害をもたらすことが明らかとなり、環境省も野焼きがPM2.5の発生源になるとして注意を呼びかけています。

微小粒子状物質(PM2.5)と野焼き行為との関連について(通知)https://www.env.go.jp/air/osen/pm/ca/300327noyaki.html

 

なお、環境省の通知では、野焼きの被害について、「当該焼却行為により、健康被害も含む人の生活に密接な関係がある環境に何らかの支障が現実に生じ、又は社会通念上そのおそれがあると判断するに相当な状態が生ずる場合」と述べ、特定の数値を測定せずとも「何らかの支障」があれば被害があると認めています。

環循適発第 2111305 号

廃棄物の処理及び清掃に関する法律第 16 条の2の規定に基づく廃棄物の焼却禁止の例外とされる焼却行為に対する行政処分等の適用について(通知) 令和3年 11 月 30 日

https://www.env.go.jp/hourei/add/k107.pdf

 

判例では、仙台高裁が、木製の型枠廃材(木材3枚約 1.1 kg)を焼却した事案(仙台高判平成22年6月1日高刑速(平22)号 267 頁)について、「白煙が地上5メートルくらいまで立ち上がり、一面にうっすらと広がり、原判示の家屋新築工事現場周辺にも焦げ臭いにおいが漂っていたというのであるから、周辺地域への影響が軽微ということは出来ない」として有罪となっています。

 

野焼きの規制の本質は、「生活環境の保全」であることからも、「臭い」というだけでも十分に規制対象になります。

もちろん、数値測定があったほうが被害を訴えるうえでより有利になることは間違いありません。

 

 

(参考)

所沢市、ダイオキシン類対策年表https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kurashi/seikatukankyo/kankyohozen/kagakubushitu/dxn_aramasi.files/dxn-nenpyou.htm#pegetop

 

 

自治労、代表レポート「埼玉・所沢のダイオキシン問題 その後」

https://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_tokushima29/jichiken/5/5_1_02.htm