昨日(11/4)、遠方から都内に出張される会員さんの提案により、東京神田の貸し会議室でミーティングを行いました。
参加者は3名と少なかったですが、被害者同士で生の声を聞けるのはとても良い機会でした。
他の会員さんも、もし都内や千葉県に来る機会がありましたら、いつでもミーティングを開催しますのでお気軽にお声掛けください。
内容は以下の通りです。
1.法解釈について確認
廃棄物処理法16条の2
第3号「公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却⼜は周辺地域の⽣活環境に
与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの」
政令(施⾏令14条)
第4号「農業、林業⼜は漁業を営むためにやむを得ないものとして⾏われる廃棄物の焼却」
第5号「たき⽕その他⽇常⽣活を営む上で通常⾏われる焼却であって軽微なもの」
農業の野焼きとその他(庭の落ち葉など)の野焼きでは法的根拠が異なる
1-1 農業について(施⾏令14条第4号)
★ 「やむを得ないもの」であることが重要
★ 施⾏令14条4号該当性の判断は、「A.公益性」、「B.社会の慣習」、「C.軽微性」に加
え、「D.他に⽅法が採れるか」と「E.適正処理の責務」を法⽬的に照らして総合的
に判断する必要性がある
(1) 環境省
● 課⻑通知(平成12年9⽉28⽇ 衛環78号)
「罰則の対象とすることが馴染まないものについて、農業者が⾏う稲わら等の焼却
などが考えられる」
● 兵庫県警疑義照会回答(平成29年9⽉15⽇ 環循適発第1709151号)
「稲わらの焼却は例⽰であり、やむを得ないものに該当するか否かは、個別具体的
事情の下において、当該地⽅公共団体において、法⽬的に照らして判断される」
● 広島市要望回答(令和3年11⽉30⽇ 環循適発第 2111305号通知)
「例外に該当するか否かは、法の⽬的に照らして合理的と認められるかにより判断
されるべきものであり、⽣活環境の保全上著しい⽀障を⽣ずる焼却は、これに含ま
れるものではない」
(2)判例
● 宇都宮地栃⽊⽀判平成29年3⽉7⽇(⽶紙袋の焼却)
「清掃センターに搬⼊するという⽅法等による処分が可能であり、本件焼却までの
間、同⽅法をとってきたことを考慮すれば、焼却の⽅法による処分を⾏うことが
『やむを得ないもの』であったといえない」
● 広島⾼判令和元年7⽉25⽇(雑⽊600kg、マムシ対策として焼却)
「野積みされた伐採⽊の辺りにマムシが棲息していると仮定しても、その棲息を防
ぐには、伐採⽊を他に移動させて野積みの状態を解消させれば⾜りることであり、
焼却の必要まではない」
● 東京⾼判令和2年8⽉20⽇(約 20.5 kgの⽵と約 4.25 kgの柿の⽊の枝等)
「公共機関であるa市クリーンセンターへ持ち込む⼿段や、近隣の業者に⾼額ではな
い⾦額で受け⼊れてもらう⼿段もあり、農業を営み、⽵の間伐も⾏い、重機も操れ
る被告⼈にとってこれらの⼿段をとることが困難ともいえないことから、本件⽵及
び本件柿の⽊の枝等の焼却は、対象物が市町村による収集になじむかどうかという
観点でも、課⻑通知が例⽰する焼却とは前提が異なり、社会慣習上やむを得ないも
のとして受容される域内には収まらない」
● 仙台⾼判令和3年9⽉14⽇(いちごの葉等約46.1kg)
「焼却せずに他の畑に運んでたい肥として使⽤することが可能であり、これはいち
ご農家にとって過重な負担になるとはいえないこと(農協もその旨の指導をしてい
た)」
(3)⾃治体の政策
● 新潟通知
「(1)政令第14条による例外規定で、稲わら焼却が農業を営むためにやむを得ない焼
却と安易に解される向きもあるが、稲わらについてはすき込み、収集利⽤など焼却
によらない処理⽅法があることや、焼却が病害⾍の⼤発⽣等の駆除のために⾏われ
ている実態ではないことから、煙害を考慮すれば、稲わら焼却は公益上から農業を
営むためにやむを得ない⾏為とは考えられないこと、(2)農業を営むためにやむを得
ない焼却とは、ウンカ・ニカメイチュウ等の特定の病害⾍の⼤発⽣などで、農薬散
布など他の⽅法よりも公益上有効な場合が想定されるが、このような事態において
も、県としては市町村等に防除・栽培上の技術的助⾔を⾏い、真に有効な⽅法であ
るかどうかの的確な指導を⾏うことが重要であること、(3)市町村・農業団体等と⼀
体となって推進している環境保全型農業において、稲わらは最も効果的な有機質資
源のひとつであり、すき込みのみならず、収集での家畜排せつ物との堆肥化などの
循環利⽤による、⼟づくりへの活⽤を積極的に推進するものとすること」
● 船橋市議会(梨の剪定枝の処理について)
「例外規定につきまして、環境省に確認をし、市の焼却施設や⺠間の施設で処理す
ることが可能であることから、法の例外規定に該当させることは難しい」
● 稲わらの適正処理
稲わらを焼却した場合とすき込みを⽐較した場合、すき込みのほうが焼却よりも⼟
の養分が増え、収穫が上がることがわかっており、各⾃治体は稲わらの適正処理を
呼びかけている
(4)その他
● 法3条1項
「事業者は、その事業活動に伴って⽣じた廃棄物を⾃らの責任において適正に処理
しなければならない」
● 法3条3項
「事業者は、前⼆項に定めるもののほか、廃棄物の減量その他その適正な処理の確
保等に関し国及び地⽅公共団体の施策に協⼒しなければならない」
● 農林⽔産省(環境と調和の取れた農業⽣産活動規範について)
「作物残さ等の有機物についても利⽤や適正な処理に努める」
(5)結論
★ 事業者の責務として、国や⾃治体の指⽰に従い廃棄物は適正に処理しなければなら
ず、⾃⼰都合での焼却は公益上やむを得ないとは認められない
★ クリーンセンターに搬⼊する、堆肥として利⽤するなど「他の⽅法が採れる」こと
が、例外該当性判断の最も重要な指標である
1-2 落ち葉焚きについて(施⾏令14条第5号)
★ 5号該当性は、(a)煙の量・におい、(b)延焼の危険、(c)時間、(d)有害性を「軽微性」
判定の主な要素とし、それ以上に重要なのが、(e)⽇常性(⽇常⽣活を営む上で通常
⾏われる焼却か否か)の判定である
(1)環境省
● 課⻑通知(平成12年9⽉28⽇ 衛環78号)
「罰則の対象とすることが馴染まないものについて、たき⽕、キャンプファイヤー
などを⾏う際の⽊くず等の焼却などが考えられる」
● 広島市要望回答(令和3年11⽉30⽇ 環循適発第 2111305号通知)
「例外に該当するか否かは、法の⽬的に照らして合理的と認められるかにより判断
されるべきものであり、⽣活環境の保全上著しい⽀障を⽣ずる焼却は、これに含ま
れるものではない」
→主に農業のやむを得ない場合の通知であるが、落ち葉焚きも同様に解釈できる
(2)判例
● 仙台⾼判平成22年6⽉1⽇(⽊製の型枠廃材(⽊材3枚約 1.1 kg)を焼却)
「本件廃材から⽩煙が地上5メートルくらいまで⽴ち上がり、⼀⾯にうっすらと広が
り、原判⽰の家屋新築⼯事現場周辺にも焦げ臭いにおいが漂っていたというのであ
るから、周辺地域への影響が軽微ということは出来ない」
● ⼭⼝地判平成27年5⽉20⽇(約 12.4 kgの⽊くずを約5時間にわたり焼却)
「焼却⾏為者、焼却態様、焼却場所、対象物の内容及び量、焼却所要時間、焼却⽅
法、周囲からの視認状態等を総合して⾒た場合、⽇常⽣活上通常⾏われるもの、あ
るいは社会慣習上やむを得ないものとしての『たき⽕』に該当するということはで
きない」
● 福岡⾼宮崎⽀判令和2年1⽉28⽇(スピーカー1台(焼却残量約1.85 kg)を焼却)
「たき⽕、キャンプファイヤー等の⽇常⽣活を営む上で通常⾏われる⾏為に際し、
⽐較的少量の⽊くず等の⾃然物が燃料として⽤いられるような場合の中には、周辺
環境に与える影響がほとんどないか、あるいは軽微であるものが含まれ得ることが
考慮されたものであると考えられる」
「⼀般常識として、不⽤品であるスピーカーの処分⽅法としては、⾃ら焼却せず、
その区分に従ってごみ等として処分するのが通常の取扱いであると認められる」
(3)その他
● 法6条の2第4項
「⼟地⼜は建物の占有者は、(略)⼀般廃棄物については、その⼀般廃棄物処理計
画に従い当該⼀般廃棄物を適正に分別し、保管する等市町村が⾏う⼀般廃棄物の収
集、運搬及び処分に協⼒しなければならない」
● 富⼭県の野焼き注意喚起チラシ
「家庭から出るごみや剪定枝などについては市町村等に引き渡して処理を⾏うこと
が⼀般的であり、これらの野焼きについては⽇常⽣活を営む上でやむを得ず⾏われ
るものには当たらないことから、原則禁⽌されています」
(4)結論
★ 「軽微なもの」の判定には、煙の量・におい、延焼の危険、時間、有害性の検証が
必要であり、燃やす量が少ないからといって軽微とは認められない
★ 5号の該当性は、「⽐較的少量の⽊くず等の⾃然物が燃料として⽤いられるような場
合」が想定され、庭の落ち葉の処理は、⽇常⽣活を営む上で通常は市町村の指定す
る⽅法で処分する必要があることから、焼却処分は禁⽌と考えられる
2.⾏政の課題
● 各⾃治体で指導⽅針が異なる
○ 稲わらの焼却は公益上やむを得ないとはいえないとする⾃治体(新潟など)
と、稲わらは例外として認められているから指導できないとする⾃治体
○ 庭の剪定枝や落ち葉の焼却を禁⽌する⾃治体と、落ち葉焚きは例外だから指
導できないとする⾃治体
○ 同じ焼却⾏為でも、処罰の対象になる⾃治体と、⾃由に燃やしている⾃治体
○ 「窓閉めて我慢しろ」、「燃やす⼈の気持ちも考えろ」、「みんな通報されて
怒ってる」、「⽥舎の地域の習慣だ」
○ 何⼗回も指導されているのに絶対に罰則を適⽤しない
● 課⻑通知が拡⼤解釈されている
○ 通知「稲わらなど」→⾃治体「稲わら、果樹剪定枝、畔の雑草」
○ 通知「たき⽕、キャンプファイヤー」→⾃治体「庭の落ち葉焚き、剪定枝」
○ 通知「どんと焼き等の地域の⾏事」→⾃治体「お墓の掃除」
3.当初の⽬標
● 法改正ではなく、環境省が課⻑通知を撤廃し新たな通知を出すこと
○ 稲わら焼きの原則禁⽌
→ 農業のやむを得ない焼却とは、公益上やむを得ない場合であり、他に⽅
法がない場合が該当
○ 庭の落ち葉焚きの原則禁⽌
→ たき⽕とは、⽐較的少量の⽊くず等の⾃然物が燃料として⽤いられるよ
うな場合が該当
4.⾃由討論
近況報告や今後の課題について話し合いました。
和気あいあいと話が脱線ばかりで2時間があっという間にすぎてしまいましたが、また次に繋がると思います。
このような機会を設けてくれた会員さんに感謝です。
おまけ
会議室の近くでこんな居酒屋を見つけました(笑)
次回はここでやりますか?
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