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米袋焼却処分の不法焼却罪


宇都宮地栃木支判平成29年3月7日判例集未掲載(平成28年(わ)第40号)

https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/record/2006526/files/TJLP_90-143.pdf

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1 概要

 

 被告人は、菌床シイタケ栽培業を営む者であり、栽培業では、精米業者から購入する米ぬかが入っていた米袋、シイタケを収穫した後の菌床、菌床をくるむビニール袋、ビニールハウス内の地面に散布していた石灰、同地面上のこけ及びキノコ類が廃棄物として排出されていた。被告人は、これらの廃棄物につき、菌床を友人に農業用の肥料として譲渡し、ビニール袋を当初は清掃センターに搬入し、搬入を断られてからは、農協に引き取ってもらうようになり、石灰、コケ及びキノコ類を、自宅敷地内の穴に埋めて処分してきた。米袋は、小屋の中に保管していた。

平成27年3月8日、小屋が火災に遭い、トタン、サッシ、断熱材、菌床を覆っていたビニール袋が溶けたもの、焦げた米袋約300枚及びすすけた米袋約100~200枚が生じた。すすけた米袋については、すすけていない米袋を保管しているコンテナに入れるのが躊躇されたため、被告人は、同年6月25日午前9時頃、本件紙袋を穴に入れ、延焼防止のために水を入れたバケツを用意し、被告人か被告人の妻のいずれかが本件穴から目を離さないようにしながら、焼却を行った。

 

2 判旨

 

(1)施行令14条4号について

 

主管省庁の見解(課長通知)にも照らして検討するところ、本件米袋は、農業である本件栽培業により生じた廃棄物であるものの、農産物自体から生じたもの等の自然物ではないという点で、課長通知における例示とは異なる。

被告人において、草や落ち葉等を本件米袋に詰めて本件清掃センターに搬入するという方法等による処分が可能であり、本件焼却までの間、同方法をとってきたことを考慮すれば、焼却の方法による処分を行うことが「やむを得ないもの」であったといえない。

 

(2)施行令14条5号について

 

本件米袋は、紙製であるものの木片や落ち葉等の自然物ではないし、本件焼却は、本件米袋の処分以外の事項を目的とするものではなかったことからすれば、「たき火」や「キャンプファイヤー」とは、焼却の性質が大きく異なるといえる。

本件焼却は、農業により生じた廃棄物を、その処分自体を目的として焼却したものであるところ、事業者について、廃棄物処理法3条1項において、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」と定められ、同法施行令14条4号において、農業、林業及び漁業という限定された事業についてのみ、かつ、それを営むためにやむを得ない場合のみが焼却禁止の除外事由として定められているという法令の構造からすれば、同条5号の「日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却」には、事業者が、事業により生じた廃棄物を、その処分自体を目的として行う焼却は含まれないと解するのが相当である。そうすると、本件焼却は、「たき火その他日常生活を営むうえで通常行われる廃棄物の焼却」に当たらないというべきである。