多くの自治体の野焼き注意喚起のチラシやホームページに、野焼き禁止の例外として「落ち葉焚き」と書かれていますが、庭の廃棄物である落ち葉を焼却処分することは違法となる可能性が高く、市町村はすべての一般廃棄物の処理責任があることから、「落ち葉を燃やして良い」と誤解を招く記述を例外から削除することを求めます。
1.背景
当会には庭の落ち葉や雑草の野焼きの煙や悪臭により、「喘息が辛い」「頭痛がする」「鼻炎が辛い」「吐き気がする」などの健康被害の声が多く寄せられています。
落ち葉などの自然物の燃焼であっても、PM2.5など多くの有害物質が発生し、健康を害することがすでに明らかになっています。
SDGsにより、廃棄物を適正処理し、大気汚染を防止し、人の健康を守り、誰ひとり取り残さないことが世界中の共通目標となっていますが、多くの人は役所に相談しても、「落ち葉焚きは禁止の例外なので強制できない、注意しかできない」と言われ、被害が改善することなく長年苦しみ続けています。
2.適正処理の責務
庭の落ち葉や雑草は、不要物として扱う場合には廃掃法(以下法と表記)では一般廃棄物に該当します。
国民は一般廃棄物の処理について、市町村の廃棄物処理計画に協力する責務(法第二条の四、第六条の二第4項)があります。
そして市町村は、一般廃棄物の適正な処理に必要な措置を講ずる責務(法第四条第1項、第六条、第六条の二第1項)があります。
多くの市町村では、ホームページなどで落ち葉の適切な処理方法について告知しています。
したがって、落ち葉を焼却処分すること並びに市町村がそれを容認することは適正処理の責務に違反していることになります。
(図:富山市ホームページより)
(図:適正処理の責務)
※実際はゴミ出ししなくても容易に
腐葉土として再生処理可能
3.焼却の禁止
施行令第十四条第五号では、「たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」が焼却禁止の例外とされていますが、日常生活を営む上で通常は庭の落ち葉は市町村の処理計画に従って適正処理する責務(法第二条の四、第六条の二第4項)があり、処理基準に満たない焼却処分は禁止されています(法施行令第三条第二号イ)。
したがって、庭での落ち葉の焼却処分は例外規定に該当しせず、ここでのたき火とは、日常生活で通常行われる煮炊きや収穫祭の焼き芋づくりなどが該当すると考えられます。
(図:富山県チラシより)
(図:日常生活で通常行われる煮炊きや収穫祭の焚き火)
4.要望の詳細
厚生省(当時)通知「衛環78号」では、「たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であって軽微なものとしては、たき火、キャンプファイヤーなどを行う際の木くず等の焼却が考えられること。」と書かれているにすぎず、「落ち葉焚き」は市町村が独自に加えた見解にすぎません。
庭の落ち葉の焼却処分は例外に当たらないというのが当会の主張ですが、仮に例外であっても、環境省通知「 環循適発第 2111305 号」によれば、健康被害も含む人の生活に密接な関係がある環境に何らかの支障が現実に生じる場合等においては、処理基準に適合しない焼却行為として、措置命令等の行政処分及び行政指導を行うことは可能となっています(法第十九条の三、第十九条の四)。
その他の通知「環廃対発第080619001号」、「環廃対発第 1410081 号」では、市町村は生活環境保全のための極めて重い処理責任があることが書かれています。
そして、「環循規発第 2104141 号」では、産業廃棄物の適正処理について指導、監督を行うべき行政が何ら処分を行わないとすることは、法の趣旨に反し、廃棄物行政に対する国民の不信を招きかねないものであることから、速やかに行政処分するように求めていますが、一般廃棄物でも同様の解釈ができます。
これらの通知より、家庭から出る廃棄物としての落ち葉を焼却処分し生活環境に悪影響を与える行為について、市町村には極めて重い責任があることがわかります。
そのような立場にある市町村が、ホームページやチラシで焼却禁止の例外として「落ち葉焚き」と紹介することは、「落ち葉を燃やして良い」と言っているに等しく、市町村の処理責任の義務を放棄していることになります。
落ち葉焚きが違法かどうかの最終的な判断は司法が個別にすることですが、処理基準に満たない落ち葉の焼却処分により多くの人が煙害に苦しんでいることから、処理責任のある市町村に対し、ホームページやチラシから、庭の落ち葉を燃やして良いと誤解を招く「落ち葉焚き」の記述を削除することを求めます。
<補足>
落ち葉の焼却について、肥料づくりのために行われる場合、例外に該当するのでしょうか。
ここでは、①農業の場合と、②一般の場合について考察します。
①農業の場合
農業の場合の例外は、施行令第十四条第四号「農業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却」によって規定されています。
ここで重要な点は、「やむを得ない」ことであって、焼却以外の他の方法が採れる場合は例外に該当しません。
農業において、落ち葉を灰にして肥料に用いる方法は数ある農法に過ぎず(むしろ少数派であって効果も限られる)、落ち葉堆肥にする農法もあります(灰よりも持続性もあり効果も高い)。
他の方法が採れるかどうかの視点でいえば、落ち葉は堆肥に出来ることから、灰づくりは例外として認められないことになります。
しかし、実際は例外として形骸化してしまい、これを覆すのは難しいです。
ここで注目すべきが、先に紹介した「 環循適発第 2111305 号」です。
人の生活に支障が生じる場合等において、行政処分及び行政指導を行うことが可能であるだけでなく、生活環境の保全上著しい支障を生ずる焼却は例外に該当しないと書かれています。
したがって、家の隣で落ち葉を焼却すれば生活環境に著しい支障が出るのは明白であることから、肥料づくりだからといって一律に例外扱いせずに、「他の方法が採れるか」、「生活に著しい支障が生じるか」を総合的に判断しなくてはなりません。
②一般の場合
一般の人が肥料づくりを行う場合は、施行令第十四条第五号「たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」に該当する必要があります。
昔から趣味として家庭菜園で灰づくりをしていた場合、「日常生活を営む上で通常行われる焼却」に該当する可能性もあります。
しかし、例外第五号は、「AであってB」と書かれてあり、前提Aと前提Bを両方満たす必要があります。つまり、日常生活に必要な焼却であっても軽微なものでなければなりません。
「軽微なもの」については、過去の裁判では、「煙が5m立ち上がっている」「あたりに焦げ臭いにおいが立ち込めている」場合には軽微として認められませんでした。
家の隣で落ち葉を燃やせば、焦げ臭いにおいによる被害を受けるのは明白であり、これを軽微と呼べるはずがありません。
また、先の「 環循適発第 2111305 号」においても、生活環境の保全上著しい支障を生ずる焼却は例外に該当しないと書かれているので、肥料づくりであっても、焦げ臭いにおいによる被害を受ける場合は例外に該当しないといえるでしょう。
ここでの考察は一つの仮説に過ぎませんが、市町村にあっては、その責務を鑑みれば、被害者目線での解釈を行い、生活環境の保全を第一に解釈することが必要と思われます。
コメントをお書きください