3月、4月は林野火災が多く、その原因の一つが畦焼きの火が燃え広がったものです。
畦焼きにより、毎年多くの犠牲も出ています。
長野放送「全身やけどで死亡 空気乾燥…野焼きによる下草火災相次ぐ」
https://www.nbs-tv.co.jp/news/articles/?cid=13320
長野朝日放送「下草火災相次ぎ死者も 火事防ぐには」
https://www.abn-tv.co.jp/news-abn/?detail=00034963
事故の絶えない危険な畦焼きは、PM2.5や悪臭の発生による健康被害の原因にもなり、法律で原則禁止されているはずですが、やむを得ないものと信じられ、多くの地域ではほとんど規制されていません。
畦焼きの言い訳としては、害虫駆除と、邪魔な草の処分の2つがあります。
草を刈りっぱなしにすると、
①害虫の隠れ家になる
②草が朽ちてフカフカの土になると斜面が崩れやすくなる
という説があります。
しかし、本当に必要なら日本全国の畦を焼かなければならないはずですが、実際は焼かないところのほうが多いです。
ニカメイガなどの稲の害虫の多くは稲藁の中で越冬するので、土にすき込めば分解されて死んでしまいます。
(参考)JAレーク伊吹「稲ワラすき込みで健全な土づくり」
https://www.ja-lakeibuki.or.jp/agriculture/pdf/einou1910.pdf
害虫の代表のカメムシは近くの林の日当たりの良いところで越冬すると言われているので、畦で越冬しているか疑問です。
岐阜県の資料によると、畦畔や周辺のイネ科雑草の中等ではカメムシの越冬が確認されませんでした。
(参考)岐阜県資料「県内におけるイネカメムシの発生動向と防除対策」
野焼きしないと畦が崩れやすくなるかどうかですが、国土交通省資料には「堤防付近で野焼きがされ堤防の芝にまで燃え広がると、堤防が弱くなってしまいます。芝がない状態の堤防は、洪水になると土が崩れやすく、堤防が決壊する可能性が高くなります。」と書かれています。
(参考)国土交通省資料「雄物川上流」
また、山口県資料によれば、火入れ(野焼き)をすると、「①少しの雨で法面の土壌土粒子が流れ出す 、②畦畔等がやせ細り崩壊の原因になる」と書かれています。
(参考)山口県 「やまぐち型畦畔法面緑化工法」https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/63971.pdf
茨城県八千代町では、芝焼きによる火災が多いことや、芝焼きに便乗した違法野焼きが見られることに加え、芝焼きと害虫の越冬密度との関連性が認められないとの調査結果があることから、芝焼きを実施しないことにしました(2020年5月時点)。
(参考)広報八千代
https://www.town.ibaraki-yachiyo.lg.jp/data/doc/1587704423_doc_99_0.pdf
また、法解釈についてですが、富山県小矢部市議会において、「県に確認したところ畦草は廃棄物として位置づけられるため、どうしてもやむを得ない事情がある場合を除いては野焼きの例外規定に該当しない」と回答しています。
(参考)週間明るい小矢部
http://ja9abj.web.fc2.com/2020web/20201227font.pdf
以上より、多くの市町村のホームページの野焼き注意喚起に、野焼きの例外規定の具体例として「畦草の野焼き」と書かれていますが、
- 畦焼きによる火災や人身事故が相次いでいること
- PM2.5や悪臭による健康被害の原因になること
- 病害虫と畦焼きとの関連性がみられないこと
- 畦が弱くなり崩れやすくなる可能性があること
- 刈り取った畦草は廃棄物と位置づけられ例外規定に該当しないこと
などを考慮し、ホームページの例外具体例から「畦草の野焼き」を削除することを要望します。
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