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環境省通知「やむを得ない」解釈


環境省より、焼却禁止の例外に関する通知が出されています(原文は末尾に記載)。

概要は次の通り。

  1. 例外であっても措置命令等の行政処分を行うことは可能である
  2. 「やむを得ない」とは、法目的に照らして合理的と認められるかにより判断する
  3. 生活環境の保全上著しい支障を生ずる焼却は例外に該当しない

それぞれについて、当会の見解をまとめました。

 

 

1.例外であっても措置命令等の行政処分を行うことは可能である

 

 

焼却禁止の例外に該当しない場合の罰則は法第25条十五に規定されていますが、例外であってもそれ以外の罰則や行政指導等の適用をすることができます

法第25条五において、措置命令に違反した者も罰則の対象になります。

問題は、一度注意されて消火した時点で措置命令に従ったとみなされ、次回の焼却行為は前回の命令はリセットされてしまうのかどうかです。

措置命令では「発生の防止のための措置」も含まれるので、再犯の場合は発生の防止に従わなかったのですから、罰則の対象になると考えます。

(そもそも、燃やさない処理を命令されるような焼却行為は始めから例外に該当しないと思うのですが)

 

<参考:福島市>例外に当たる焼却であっても、生活環境保全上の支障が生じる場合は、改善命令等の対象となり、これに従わない場合は処罰の対象となります。

 

 

2.「やむを得ない」とは、法目的に照らして合理的と認められるかにより判断する

  

法目的とは、「廃棄物の適正処理による生活環境の保全」であるので、客観的に見て他の処理方法が考えられる場合には「やむを得ない」とする合理的理由はありません。

害虫の潜んだ雑草や作物残さは堆肥化や埋没処理の過程で死滅し、それが無理なら処分場に運搬すれば燃やす必要はありません。

全国には野焼きしない農法も多数あることから、絶対に野焼きが必要な状況はほとんどありません。

廃掃法16条の2における「公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない」とは、害虫の大発生により公益上燃やすより仕方ない場合や、地域の伝統行事の野焼きが該当するものと考えられます。

なお、慣習とは地域の伝統的な習わしのことであり、昔からやっていたという個人的習慣とは異なります。

 

<参考:三条市>「農業を営む上でやむを得ない場合」とは焼却する以外に有効な手段が無い場合であり、病害虫の大発生時などにおいて、農薬散布等より焼却を行う方が公益上で有効と判断される場合などが該当します。もみ殻燻炭焼きは、煙で生活環境に支障を来す場合は違法となります。

 

 

3.生活環境の保全上著しい支障を生ずる焼却は例外に該当しない

 

 

通知には「健康被害も含む人の生活に密接な関係がある環境に何らかの支障が現実に生じる(略)場合等においては、処理基準に適合しない」とあることから、「喘息が悪化する、洗濯ができない」なども生活に支障が出ることから例外に該当しないと考えます。

あくまでも「生活環境の保全」を優先すべきであり、焼却量や焼却物質を問うべきではありません。

 

 

4.その他

 

 

今回の通知は「やむを得ない」ことの解釈でしたが、庭の落葉焚きのような軽微な焚き火についての解釈がありませんでした。

しかし、法目的に照らして考えるなら、庭の落ち葉は自治体の処理ルールに従って適正処理することが求められること、落葉焚きの煙害により生活環境に支障をきたすことから、庭での落葉焚きは例外に該当しないと考えられます。

仮に例外であったとしても、措置命令をすることは可能であり、発生の防止の指示に従わずに再び焼却行為に及ぶ場合は罰則の対象になります。

通知について、全体的に目新しい内容はありませんでしたが、「例外であっても法第25条十五以外の罰則や措置命令ができる」ことが明記されましたので、被害を受けたら躊躇なく役所に相談してみましょう。

 

(追記)

今回の通知はホームページ読者からの情報提供で知ることが出来ました。日頃から情報収集をしているつもりですが、見逃すこともありますので、どんな情報でも気が付きましたら教えて下さると助かります。

 

環循適発第 2111305 号

廃棄物の処理及び清掃に関する法律第 16 条の2の規定に基づく廃棄物の焼却禁止の例外とされる焼却行為に対する行政処分等の適用について(通知) 令和3年 11 月 30 日

 

  • 法第 16 条の2の規定において焼却禁止の例外とされる廃棄物の焼却に該当するとしても、同条に係る罰則以外の罰則及び行政処分の適用を除外するものではない
  • 焼却禁止の例外とされる廃棄物の焼却についても、当該焼却行為により、健康被害も含む人の生活に密接な関係がある環境に何らかの支障が現実に生じ、又は社会通念上そのおそれがあると判断するに相当な状態が生ずる場合等においては、処理基準に適合しない焼却行為として、措置命令等の行政処分及び行政指導を行うことは可能であること
  • 例外規定における「やむを得ない」ものといえるか否かの解釈に当たっては、公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却に該当するか否かという点を勘案し、法の目的に照らして合理的と認められるかにより判断されるべきものであり、生活環境の保全上著しい支障を生ずる焼却は、これに含まれるものではない

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コメント: 3
  • #1

    やっと環境省が動いてくれましたね (火曜日, 21 6月 2022 00:42)

    恐らくこの通知に至った電話での行政への相談者の一人です。
    衛環78号を見つけた上で総務省の地方行政相談や直接環境省へ矛盾点を訴え無ければ、今でも環境省は例外規定の曲解を知らず、農家だから焚火だからが通用してたと思うと背筋が寒く成ります。
    法令への明記まで言った事も有るのですが、流石にハードルが高かったのかされて無い様ですが。
    1つ分かった事は省庁の人は地方末端の事は把握しておらず、実情を知らないので法の曲解がまかり通ってる場合、何かしらで訴え伝える必要が有ると言う事です。
    但し衛環78号の様に法が曲解されてる証拠を探す必要が有る訳ですが…。
    少なくとも昔と違ってネット上で検索可能なのでハードルは低いが、恐らく農家は例外の元と成ったネット上の無料法律相談(ヤフーの記事よりかなり前から有った)の様にもっともらしい、いい加減なフェイクをつかまされない様に。

    さて、環境省が例外規定は強化した罰則に対しての例外であり措置命令等は可能であると再度明言してる以上、環境省側は判断がどうの言ってますが既にやむをえないかどうか以前の問題ですよ。
    何故なら法令上は原則禁止なので。
    まして相手側が自分の行為を例外規定の内だと訴えるので有れば、それは自ら廃掃法上の行為、つまり原則禁止の行為をしてると自白してる訳ですから。

    そもそも廃掃法は例外規定を行っている者を保護する法では無く、焼却行為等で被害を受ける側を守る為の法律なので、喉が痛い等の健康被害、窓が開けられない洗濯物が干せない等の生活環境への影響、受けてる被害を訴えればやむを得ないとか関係無いのですよ。

    何故なら廃掃法は本来それらを抑える為の法であり、焼く側の言い分でしょうがない、これぐらいを容認する法ではないので被害を訴える側の言い分の方を重視すべきなのです。

    それを法を勝手な解釈で例外だからやっても良いとか言う輩に対しては、今までの貴方の法解釈が間違っている、健康や生活にも影響が出てる、止めろとハッキリ言ってやれば良いのですよ。

    もし役所の人間がこの通知すら読んでおらず、これからもしょうがない、やむを得ない、などと言うのであれば業務上の怠慢、いや義務違反であるとこの通知を知らした上で市長等に訴えましょう。
    何より今までやっても良いと言ってた人間が突然今日から駄目だとは言えないでしょうから、その人にはどこかに移動してもらって法を順守できる新しい人に変わってもらった方がお互いの為かと。

  • #2

    これから被害者がやるべき事 (金曜日, 24 6月 2022 09:41)

    通知はされたものの未だに加害者側だけでなく被害者一般の認識も
    <農家だから焚火だから何も言えない>のまま
    これを放置しておくとまた農家だから、焚火だからがまかり通ってしまう。
    なので役所のゴミ出しカレンダーなり広報、地方地なりでいままのでの認識が間違ってました、農家であろうとも原則禁止ですと隅々にまで広める事が大事。
    役所が動かない場合、共産でも何でも良いので広報してくれる所を見つけましょう。

    言い方は悪いですが、ここだけでごちゃごちゃ言っててもここを見てない人には何も伝わらない。

    あと、広める為にもここの主は過去の書き込みからしても奥さんの健康被害等々確実に受けてるのでいい加減な法の解釈をし、いい加減な対応をしていた行政を訴えるなりしたらどうでしょうか。
    通知から解釈が間違えていて、しかも法改正の時にも衛環78号でほぼ同じ内容が通知されていた。
    これでもやる気の起きない弁護士ならやる気の有る弁護士を探しましょう。

    結局の所、過去何度も繰り返されてきた公害問題での公害元の企業が無いと市が成り立たない、健康被害なんて嘘だ悪く言うなみたいな事が今回も繰り返されてた訳ですから弁護士の方々の好きな過去の判例も山ほど有る訳です。

    焼かなきゃしょうがない?
    汚染水処理なんかやってられない、垂れ流さないとしょうがない
    と言ってる事は何も変わりませんよと。
    当然、昔からやってたなんて言い訳も通用しないし誰がやったかも関係無い。

    先ずは加害者に奪われていた法の盾をきっちり被害者側に戻してもらいましょう。

  • #3

    やむをえないの解釈も明言されています (木曜日, 11 8月 2022 08:34)

    なお、同条各号が規定されていることを奇貨として、同条各号に該当する焼却行為であると称し、悪質な廃棄物の焼却が行われることを防止するべく、取締りの観点から限定的に解するため、同条第4号においては、「やむを得ない」と付言したものである。

    とあり奇貨「利用すれば思わぬ利益を得られそうな事柄・機会」(デジタル大辞泉より)つまり廃棄物の焼却により利益を得る様な場合は駄目って事です。
    有料のゴミ出しにお金を払うのが嫌だとか、野焼きによって処分費を浮かせる等々は駄目って事。
    一方で公益上若しくは社会の慣習上、つまり個人や会社の利益に成るでもないものはやむを得ないと言う事。