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例外の記述を見直すキャンペーン・2


前回記事「例外の記述を見直すキャンペーン」の続編です。

 

野焼き禁止の例外規定としては、具体的に厚生省(当時)通知衛環78号により、以下のように定められています。

 

(下画像:三田市ホームページより)

 

野焼き騒動で批判の的になった三田市ですが、ホームページには通知に則った記述がされています。

(騒動後に書き換えられたのかどうかは不明です)

具体例は次のとおりです。

  • 農業者が行う稲わら等の焼却
  • 林業者が行う伐採した枝条等の焼却
  • たき火、キャンプファイヤーなどを行う際の木くず等の焼却

<通知に則った記述の自治体>

常陸太田市、養父市など

 

 

具体例が書かれていてもこれらは例示に過ぎず、「燃やして良い」と解釈するのは誤りです。

廃棄物は生活に支障がない様に適正処理する責務があり、「公益上やむを得ない場合」または「軽微なもの」のみ焼却禁止の例外となります。

その判断は、法の目的に照らし合わせ個別に現場で判断しなければなりません。

(参考:環循適発第1709151号

 

一般的に例外とは極めて希な状況に用いるものです。

国民は環境を保全する責務(環境基本法第九条)と廃棄物を適正に処理する責務(廃掃法第二条)があり、例外だからといってみだりに燃やすことが認められている訳ではありません。

したがって、やみくもに具体例を記述することは、かえって燃やして良いと判断されるおそれがあり、避けるべきです。

 

<具体例のない、または令14条のみ記載の自治体>

高松市、さぬき市、神戸市、青森市、帯広市、佐渡市、松戸市、銚子市、西尾市、宗像市など多数

 

しかし、多くの自治体では、通知に記載された具体例以外に独自に燃やして良いものを付け加えてしまっています。

そのことが「農業は燃やして良い」「草木は燃やして良い」といった誤解を招き、多くの地域で野焼きが横行している原因になっています。

また、何度も苦情が出ている悪質なケースであっても、ホームページに記載されている事で指導に矛盾が生じ、罰則の適用が困難になってしまっています。

 

<独自に付け加えられた例外>

 

農林漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却

  • 草、枝葉、もみがら、わら等の焼却(伊那市)
  • 畦の草および下枝の焼却(福岡県、岐阜県、安城市、三次市)
  • 病害虫防除目的の稲わら、畦畔の枯草などの焼却(印西市)
  • 田に隣接する河川堤等の下刈草の焼却行為(岡山市)
  • 田んぼのあぜ焼き(可児市、紀北町)
  • 刈りとった雑草(鹿嶋市)
  • 畦の草及び下草の焼却(白井市)
  • 梨農家の剪定枝の焼却(白井市)
  • 果樹園から発生する剪定枝等の焼却(岡山市、上田市)
  • 農地(田畑)で行う草木などの焼却は、害虫の発生を防ぐ効果や、焼却灰を肥料として使うために行われている作業です(清須市)
    など

たき火その他日常生活において通常の廃棄物の焼却であって軽微なもの

  • 落ち葉、一時的に出される少量の剪定枝、空地の刈りとった草木の焼却(伊那市)
  • 落ち葉焚き(福岡県、岐阜県、安城市、白井市、紀北町など多数)
  • 庭先での小規模な落ち葉焚き(印西市など)
  • せん定した庭木の焼却(上田市)
    など

(下画像:伊那市チラシ

 

それらの具体例は廃棄物の適正処理の責務に照らせば不適切といえます。

では、それぞれ不適切な理由をあげてみます。

 

 

 

・もみがら

もみ殻は貴重な有機物資源として、すき込みや堆肥化することで土づくりに役立ちます。そのため、新潟県秋田県などではもみ殻を燃やさないように指導しています。

 

<新潟県>

貴重な有機質資源である稲わらや籾がらの焼却はやめ、環境にも人にも優しい「新潟米」づくりを実践しましょう。

 

<秋田県>

稲わら・もみ殻の処分は、県・市町村農林部局やJAから助言を得ながら、焼却せずに有効活用に努めましょう。

 

 

 

・畦の草(刈り草)

北海道や富山県では、刈りとった雑草は廃棄物であり、やむを得ない事情がある場合を除いては野焼きの例外規定に該当しないと解釈しています。

一部地域で慣習的に行われている芝焼き(面焼き)は廃棄物の焼却ではないため、廃掃法の例外として書くべきではなく、森林法や消防条例などの注記事項として記載するべきです。

ただし、芝焼きによる病害虫防除効果は判然とせず、発生するPM2.5や悪臭により大気や健康に悪影響があり、また、土手焼きにより土が露出すると土手が崩れる恐れがあることから、自治体としては芝焼きに変わる方法を指導するべきです。

 

<富山県>

小矢部市会議員のブログより、議員の質問に対する小矢部市民生部長の回答

20201227font.pdf (fc2.com)

畦草の焼却について県に確認したところ、畦草は廃棄物として位置づけられるため、どうしてもやむを得ない事情がある場合を除いては野焼きの例外規定に該当しないとの解釈を全国的にとっているとの回答であった。

 

<北海道>

筆者が北海道農政部生産振興局技術普及課に問合せした回答(2015/8/14)

あぜ道等の雑草の焼却に関しての見解ですが、(略)稲わら等や刈り取られた雑草は廃棄物と考えており、廃掃法では、施行令第14条第4項で、農業を営むためにやむを得ないもの以外の廃棄物の焼却を禁止しているものと考えております。

農家に対しての指導にあたっては、これら有機物はほ場副産物と認識しており、化学肥料の代替効果も期待できることから、堆肥化などの活用を指導しているところです。(営農指導方針p15)

 

<栃木県>

「芝焼き」に代わる病害虫の防除方法について

https://www.agrinet.pref.tochigi.lg.jp/member/2013/01/31/1230.html

 水田を適切に管理し、病害虫の発生を抑える

 

国土交通省 東北地方整備局

野焼きが原因で、河川管理施設(堤防、排水樋管など)が損傷する恐れがありますので、野焼きは行わないで下さい。堤防付近で野焼きがされ堤防の芝にまで燃え広がると、堤防が弱くなってしまいます。芝がない状態の堤防は、洪水になると土が崩れやすく、堤防が決壊する可能性が高くなります。堤防が決壊すると水が溢れ出し、皆さんの財産が大きな被害を受けてしまいます。

 

<山口県>

「やまぐち型畦畔法面緑化工法」

火入れをすると

①少しの雨で法面の土壌粒子が流れ出す

②畦畔等が痩せ細り、崩壊の原因になる

 

 

 

・果樹剪定枝

 剪定した枝は一般廃棄物として適正処理する責務があります。そのため、多くの果樹農家は粉砕機を購入して粉砕処理したり、処分場に運搬処分したりしてその責務を果たしています。

衛環78号に示された「伐採した枝」の焼却は、急傾斜の山林から搬出困難な林業の例として示されたものと考えられ、果樹の剪定枝を指すものではありません。

 

<船橋市>

平成21年第4回定例会,12月02日-05号 環境部長答弁

例外規定につきまして、環境省に確認をし、本市といたしましては、ご質問の剪定枝のケースはこの例外には当たらないと判断しております。

 

<鶴岡市>

農業関係の廃棄物は適正に処理する必要があります。

剪定枝・枝豆の残渣などの一般廃棄物の処分は、次のいずれかの方法で処理をする。

*クリーンセンターへ持ち込む

*許可業者

 

 

 

 

落ち葉、庭木の剪定枝

庭の落ち葉は一般廃棄物であり、市町村は処理計画を作成しその適正処理の責任を負う義務があり、市町村民はその処理計画に従う責務があります(廃掃法第2,4,6条)。

多くの国民が落ち葉を堆肥にしたりゴミ袋に入れてゴミ出ししている一方で、一握りの人が庭の掃除の度に落葉を燃やすことを認めるのは不公平極まりありません。

(もちろん、他の農作物残さや雑草も同様です)

法目的に照らせば、衛環78号に示された「たき火」とは、「煮炊きや暖を取るための木くずの焼却、子供会の焼き芋大会等」と解釈するのが妥当です。

 

八王子市

以下のように、焼却行為の禁止制限から外れる行為もあります。

① 伝統的行事および風俗慣習上の行事(お祭り、どんど焼き、お焚き上げ)

② 学校行事および社会教育活動(活動に伴うキャンプファイヤー、焼き芋

③ 知事が特に認める場合(災害時の応急対策) 

 

ひたちなか市

落ち葉を利用した焼きいもやバーベキュー,キャンプファイヤーのイメージです。

 

黒部市

家庭から出るごみや剪定枝などについては市町村等に引き渡して処理を行うことが一般的であり、これらの野焼きについては日常生活を営む上でやむを得ず行われるものには当たらないことから、原則禁止されています。

 

<その他の庭木などを原則禁止としている市>

旭川(河川や公園などを清掃し集められた草木)紋別(剪定木)東松島(草、剪定枝、畑での野菜の枯枝・枯葉)水戸(剪定枝、刈草)日立(刈草、剪定枝)常陸太田(庭木の剪定)館林(剪定枝、刈草)銚子(剪定樹木、刈草)狛江(落ち葉や庭木の剪定枝)東大和(落ち葉)新発田(草木)村上(草木)佐渡(枯草)氷見黒部小矢部南砺射水剪定樹木・刈草)可児市雑草や枝木竹)瀬戸市春日井市(市民、神社、寺、自治会等の落ち葉、雑草)豊田(自家用田畑、庭の木や雑草)東近江(庭木の枝葉や雑草)交野(草刈りを含む廃棄物)尼崎(家庭で出た雑草)西宮(落ち葉)相生(草や落ち葉)海南(庭木の剪定くず)徳島(庭の草や枝、寺の落ち葉や枝)宗像(庭木の剪定枝)うきは(刈った草)宮若(刈り取った竹や草木)糸島(庭木の剪定ゴミ)沖縄(空き地の草木)、他多数

 

 

 

以上より、もみがら、畔の草、剪定枝、落ち葉などは適正処理することが基本であり、焼却を禁止としている市町村も多いことから、ホームページや注意喚起チラシから「もみがら・畔の草・剪定枝・落ち葉」の記述を削除することを各市町村に要望します。

繰り返しますが、例外か否かの判断は、法目的に沿って個別に行われるものであり、市町村が独自に例外の具体例を挙げるべきではありません。