· 

温暖化対策【土壌の炭素貯留】


野焼き被害者(化学物質過敏症)の声:千葉県(#2

 

化学物質過敏症の為家の換気をしないと息苦しいのですが、野焼きをされると換気が出来ず困ります。家の中でも外でも息苦しく身の置き所がなく、空気清浄機とマスクをつけじっと耐えています。


前回、バイオ炭普及への懸念について書きましたが、納得いかないのでもう一度書き直しました。

重複する箇所もありますが、両方読んで理解を深めてください。

 

<本題>

温暖化対策として、【土壌の炭素貯留】という方法が有効です。

 

大気中のCO2を吸収した植物を地中に戻すと、土の中で炭素が蓄えられ、大気中のCO2を減らせることができます。

 

具体的には、作物残さ(枯れた枝葉)、雑草、緑肥などを、堆肥化、すき込み、マルチングなどの方法で土に戻します。

すると、微生物によって分解され、その過程でCO2は一部再び大気に戻りますが、分解されずに残った残骸(腐植といいます)は土に留まります。

腐植物質は炭素を多く含むので、その分の大気中のCO2が削減したことになります。

(画像:北陸地域環境保全型農業推進シンポジウム

 

炭素というと、炭と勘違いされる方もいるようですが、土壌の炭素貯留の考え方の主流は、植物に含まれる炭素原子をそのまま土に還す方法です。

 

海外のサイト(『4per1000』)で土壌の炭素貯留の中で、”carbon”という単語が出てきますが、carbonは炭素原子を指し、炭ではありません。

炭は英語で”charcoal”といい、植物由来の炭を”biochar(バイオ炭)”といいます。

 

もちろん、炭は炭素原子の塊なので、土に入れると大気中のCO2を減らすことができます。

しかも、腐植物質よりも長期間分解されないので、温暖化対策としてバイオ炭の土壌還元を進める動きもあります。

 

温暖化対策として有効なバイオ炭ですが、デメリットもあります。

バイオ炭の製造には高度な性能の施設が必要です。

 

安易に作れば煤煙・悪臭が発生し、環境汚染となります。

 

煤煙には、アセトアルデヒド、グアヤコール、クレゾールなどの刺激性の強い化学物質が含まれます。

(参考:奈良炭化工業株式会社

(関連記事:野焼きの現状・3 ♯燻炭の煙害

 

喘息や化学物質過敏症患者は、微量の化学物質で呼吸困難、頭痛、倦怠感などの健康被害が生じます。

 

温暖化対策の本質は、人間の生活を守ることです。

温暖化対策の大義名分に盲目的になり、健康被害者をないがしろにすることはあってはならないことです。

 

安易な炭作りは慎むべきで、土壌の炭素貯留の原則は堆肥化・すき込み・マルチングです。

 

腐植物質には、炭素貯留効果だけでなく、その他にも①保肥力の増加、②養分の貯蔵庫、③団粒構造の形成など、多くの効果があります。

(下画像:日本土壌協会「有機農業の基礎知識」

(腐植の役割について作物生育との関係)

① 土壌の塩基置換容量 (CEC) の拡大による保肥力の増大

腐植物質はカルボキシル基 (-COOH) が多いため、 塩基置換容量 (CEC) は、 一般に粘土鉱物よりはるかに大きく、 腐植含量を高めると塩基置換容量が高まる。

② 作物に供給する養分の貯蔵庫

有機物の形態で蓄えられた窒素やリンなどが、 微生物の働きによって無機化されて作物に吸収 ・ 利用されるようになる。

③ 土壌団粒の形成

腐植物質を餌とする微生物が生産する多糖類や糸状菌の菌糸の働きで、 土壌粒子を結合し団粒構造を形成する。

 

 

腐植の多い土壌は根が良く張り、病害虫に強く、品質の良い作物が育ちます。

また、腐植の多い土壌は風水害にも強く、土壌の流亡を防ぎます。

 

今こそ腐植の効果を見直し、土壌の炭素貯留に努めましょう。

 

 

<まとめ>

 

温暖化対策としての【土壌の炭素貯留】とは、大気中のCO2を吸収した植物を地中に戻すことで、土の中で炭素が蓄えられ、大気中のCO2を減らす効果のことです。

ここでいう炭素とは、腐植物質に含まれる炭素原子の事で、炭の事ではありません。

安易な炭作りは煤煙が発生し、人の健康被害の原因になります。

温暖化対策の本質は人の生活を守ることで、人の健康を害することがあってはなりません。

腐植の多い土壌は温暖化対策以外にも多くの効果があるため、土壌の炭素貯留に努めましょう。

コメントをお書きください

コメント: 2
  • #1

    行政の縦割り (土曜日, 28 11月 2020 15:36)

    行政の縦割りの弊害が騒がれる昨今
    これ、各省庁間だけじゃなく各省庁の管轄でも存在してる事実
    農水省でも農業、林業、畜産業で完全縦割り

    お陰で農業残渣を畜産に役立てるなんて頭も無く
    農家でどう処理するかしかかんがえてない

    選定枝の再利用にしても林業系なら再利用を幾らでもやってるのに
    農家でどう処分するかしか考えてない

    地方行政に至っても全く同じ
    ベテランになれば成るほど縄張り意識の様な物が出来上がってて
    他の部署を協力して何かやろうなんて思いもしない

    こんな状態で循環系農業を推奨?
    貴方たちがやりたいのは小学生の考えた最強の農業ですか?
    どうしようも無いのは限られた自分の知識だけでどうにかなると思ってるお前らの頭だ。

  • #2

    管理人 (木曜日, 11 11月 2021 08:23)

    2021/11/8にコメント頂いた松田様
    個人情報が表示されてしまっていたのでコメントを削除させて頂きました。
    当会の趣旨に否定的な投稿はいろいろと面倒なので直ちに削除するのですが、今回は判断できなかったので、回答を
    11日 11月 2021ブログ記事
    「土壌の炭素貯留について」
    に掲載しました。