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芝焼き・土手焼きを考える


芝焼き・土手焼きとは、冬~春先に畔の枯れ草を面的に焼き払う行為です。

 

行政も含め、多くの人が勘違いしていますが、土手焼きは廃棄物処理法(廃掃法)では規制できません。

なぜなら、燃やしているのは廃棄物ではないからです。

 

一方で、刈り取った草を集めて燃やすのは廃棄物の焼却なので、原則禁止です。

 

 

刈りとった草は堆肥などに活用し、利用できないものは廃棄物として適正に処理する必要があります。

 

小谷部市議会2020年12月)畦草は廃棄物として位置づけられるため、どうしてもやむを得ない事情がある場合を除いては野焼きの例外規定に該当しない

 

では、土手焼きの煙害に対しては泣き寝入りするしかないのでしょうか。

廃掃法で規制できないということは、廃掃法の例外規定も適用できません!

 (「河川の野焼きや農業の野焼きが認められる」という理屈は通用しません!)

 

悪臭防止法では、悪臭により生活環境が損なわれる事が規制されています。

 

(国民の責務)

第十四条 何人も、住居が集合している地域においては、飲食物の調理、愛がんする動物の飼養その他その日常生活における行為に伴い悪臭が発生し、周辺地域における住民の生活環境が損なわれることのないように努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する悪臭の防止による生活環境の保全に関する施策に協力しなければならない。

 

(悪臭が生ずる物の焼却の禁止)

第十五条 何人も、住居が集合している地域においては、みだりに、ゴム、皮革、合成樹脂、廃油その他の燃焼に伴つて悪臭が生ずる物を野外で多量に焼却してはならない

 

(国及び地方公共団体の責務)

 

第十七条 地方公共団体は、その区域の自然的、社会的条件に応じ、悪臭の防止のための住民の努力に対する支援、必要な情報の提供その他の悪臭の防止による生活環境の保全に関する施策を策定し、及び実施するように努めなければならない。

 

環境基本法では、国民の健康で文化的な生活の確保のために、日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めることが求められています。

 

(環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等)

第四条 環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減するとその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。

 

(地方公共団体の責務)

第七条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 

(国民の責務)

第九条 国民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない

 

どちらも罰則はありませんが、住宅地付近で土手焼きをして環境が損なわれる事は法律違反であり、行政は環境が損なわれないように対応する責務があります。

(住宅がほとんどないような過疎地域では悪臭防止法の適用は難しいかも)

 

土手焼きは悪臭以外のデメリットもあります。

土が露出すると土壌が流出し、斜面が崩壊する恐れがあります。

 

国土交通省 東北地方整備局

野焼きが原因で、河川管理施設(堤防、排水樋管など)が損傷する恐れがありますので、野焼きは行わないで下さい。堤防付近で野焼きがされ堤防の芝にまで燃え広がると、堤防が弱くなってしまいます。芝がない状態の堤防は、洪水になると土が崩れやすく、堤防が決壊する可能性が高くなります。堤防が決壊すると水が溢れ出し、皆さんの財産が大きな被害を受けてしまいます。

 

 

山口県「やまぐち型畦畔法面緑化工法」

火入れをすると

①少しの雨で法面の土壌粒子が流れ出す
②畦畔等が痩せ細り、崩壊の原因になる

 

O県O市野焼き被害者のTwitterより

土手焼き問い合わせに対する河川管理課の回答

 

野焼きする理由のひとつに害虫駆除がありますが、多くの地域では野焼きしない土手管理をしています。

一部の地域の野焼きだけを認めることは、公益上やむを得ないとは言えません。

野焼きの害虫駆除効果は判然とせず、野焼きしない害虫防除方法を進める自治体もあります。
水田のカメムシ被害は、穂を付ける前の適切な草刈で防ぐことができます。

 

(参考)栃木県「芝焼き」に代わる病害虫の防除方法について

 

 

まとめ

  1. 土手の面焼きは廃棄物の焼却ではないので、廃掃法の例外規定に当てはまらない
  2. 住宅地付近の土手焼きは悪臭防止法により禁止されている
  3. 土手焼きをすると土が流出しやすくなり土手が崩れやすくなるため、国土交通省は野焼きを認めていない
  4. 野焼きによる害虫駆除効果は判然とせず、稲穂を付ける前の適切な時期の草刈で害虫駆除効果がある
  5. 土手焼きしない地域も多く、一部の地域の土手焼きは公益上やむを得ない理由にならず、それを認めることは不平等である
  6. 地方自治体は悪臭防止と環境保全のために必要な措置を取らなければならない

    以上により、地方自治体は土手焼きの申請があった時、または土手焼きの苦情があった時は、野焼きをやめさせる措置を取らなければならない