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バイオ炭普及への懸念 ”carbon”と”charcoal”


温暖化防止対策として、土壌の炭素貯留が有効であり、海外では『4per1000』というサイトで啓発が進められています。

年に4/1000(0.4%)の割合で土壌に炭素が蓄積するだけで大気中の炭素を減らすことができます。

An annual growth rate of 0.4% in the soil carbon stocks, or 4‰ per year, in the first 30-40 cm of soil, would significantly reduce the CO2 concentration in the atmosphere related to human activities.

 

ここで、”carbon”という単語が出てきますが、カーボンとは炭素原子のことで、雑草や作物残さ等の有機物に含まれる炭素原子を指します。

 

”carbon”は炭ではありませんので注意してください。

 

大気中の二酸化炭素を吸収した雑草や作物残さを堆肥や敷材(マルチ)として土に戻すと、微生物によって分解されますが、分解されない残りカス(腐植といいます)は、いつまでも土に残ります。

腐植は、多くの炭素原子を含むので、大気中の二酸化炭素を減らせることができます。

(参考:平成23年度 食料・農業・農村白書

 

土壌の炭素貯留というと、”炭素”と”炭”が同じ漢字を使用しているためか、炭を土に投入することと思っている人も多くいるようです。

 

炭は英語で”charcoal”といい、植物由来の炭を”biochar”(バイオ炭)といいます。

炭は炭素を多く含み、微生物に分解されずに長期間土壌にとどまるので、バイオ炭を土壌に還元することも温暖化対策になります。

 

通常、バイオ炭は、専門業者による高性能な装置を使って製造されます。

一定の温度で炭化させることでムラのない良質な炭を作ることができ、排熱の再利用も可能です。

バイオ炭は保温性、保水性、通気性に優れ、土壌改良材として使用されます。

(参考:関西産業株式会社

 

 

千葉県にはバイオ炭による無農薬農法をする農園があり、定期的に竹林整備をして竹を野焼きして竹炭を作っています。

 

野焼き煙害被害者の会は、違法な野焼きを取り締まらない行政への働きを行う団体ですので、市民活動へ口出しするような野暮なことは致しませんが、これを真似してあちこちで行われるようになってしまうと、事情が違ってきます。

 

どんなに気を付けて竹炭作りをしても必ず煙(PM2.5)と悪臭は発生します。

竹炭作りは廃棄物処理ではないので廃棄物処理法で取り締まる事は出来ません。

しかし、環境基本法、悪臭防止法により生活環境に支障が出る事業は原則禁止されています。

生活環境に支障が出る場合には、止めて頂くようお願いしなくてはなりません。

 

更に懸念されるのは、「炭を作ってる」と言い訳をして何でもかんでも野焼きする輩が増えてしまうことです。

 

正当な市民活動か悪質な廃棄物処理かは一目でわかると思います。

とにかく、悪臭被害を受けたら、一度は苦情を入れてみましょう 。

 

<補足>

バイオ炭を検索すると良いことばかり書かれていますが、

  • 悪臭が発生する
  • 処理に時間がかかる
  • 処理施設のコストがかかる
  • 処理施設への運搬コストがかかる

などデメリットも多いです。

バイオ炭の副産物である煙を蒸留して得られる木酢液には、アセトアルデヒド、グアヤコール、クレゾールなどの刺激性の強い化学物質が含まれます。

(参考:奈良炭化工業株式会社

(関連記事:野焼きの現状・3 ♯燻炭の煙害

 

当然、煙にはこれらの化学物質が含まれると想定され、煙で体調不良になるのは当然のことです。

 

温暖化対策は、人の安全な生活を守ることが目的です。

温暖化対策のためにバイオ炭が普及することで、人の健康に支障が出るのは本末転倒です。

 

竹や剪定枝は粉砕機でチップにした方が処理が楽だと思います。

チップは敷材や堆肥として利用できます。

 

有機物の豊富な土壌は、たくさんの微生物の働きにより団粒構造が発達し、水分や養分の保持機能が高まり、気候変化にも強くなります。

また、たくさんの微生物の中には、病原菌に対抗する拮抗微生物もいることから、病害を抑制することができます。

 

土壌に有機物を増やすことは土づくりの基本です。

 

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コメント: 3
  • #1

    年寄って (水曜日, 25 11月 2020 01:19)

    年寄って魚やパンの焦げはガンに成るとか信じてる癖に
    野焼きの低温燃焼で発生した煤や煙は問題ないって言うんだよね
    胃に入れるより肺に入れる方がそのまま血中行く可能性有る分ヤバイだろうに

  • #2

    戦うには (日曜日, 29 11月 2020 00:25)

    戦うには先ず敵を知れ
    お陰で知識だけはその辺の役人や似非農家より上に
    それでもちゃんと農業をやってる方々には遠く及ばない
    経験的知識を科学的根拠で補ってるだけなのを実感すると同時に
    知識も無く焼くしか対処法を知らない自称農家が増えてる事と
    行政の縦割りが農業、林業、畜産業の間にも壁を作ってて
    問題を拡大させてるんだなと実感する

    各業種間で昔ながらの人と人の付き合いが上手く行ってる所ほど循環もちゃんとしてて、人の話を聞かない我が道を行く様なのが仕切ってる所ほど野焼きしてる。

    まぁそうだよね。
    話ができて、人付き合いもできて、知識も有れば焼くしかないなんて結論にはならないもの。
    野焼きしかできないのは人として、そして農家としての何かが欠けてるから。

  • #3

    例えば (日曜日, 29 11月 2020 00:53)

    林業やってる所が選定枝や間伐材を全部焼いてたらどうなるか
    間違いなく農業の野焼きどころの問題じゃなく成る
    そこはチップ化したりおが屑として畜産業で活用してるのでそうなって無い
    なんで農家はそうならないんでしょうかね

    籾殻は分解に時間が掛かる?
    ひと手間かけて粉末状にすれば分解も吸水力も上がりますよ。
    マルチにするにはそのままの方が中空で空気を含んで良いかもだけど。

    手間とコストが?
    行政から助成金なり引っ張ってくりゃ良いでしょ
    あなた方を仕切ってる方は普段デカイ口を叩いてる割にその程度もできない人物なのですか?
    粉砕機も脱穀機に隣接、繋いで設置して同時に扱えば良い
    粉砕機が場所とる?
    出るもみ殻のカサも減るから大した問題じゃないですよ。